2007 Fiscal Year Annual Research Report
天然生理活性物質トウトマイセチンを用いたPP1阻害による細胞内情報伝達の網羅解析
Project/Area Number |
05J08774
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三橋 進也 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | プロテインホスファターゼ / PP1 / トウトマイセチン / TNF / NF-kappaB / IKK / EGF / Raf |
Research Abstract |
本研究では従来の生化学的手法に加え、1型プロテインホスファターゼ(PP1)の初めての特異的阻害剤トウトマイセチン(TC)、および質量分析装置等の新技術を組み合わせて使用し、特に細胞膜直下のリン酸化タンパク質の網羅的な解析を行う。そして、その成果によって癌、糖尿病および免疫系をはじめとする生命科学分野に新たな展開をもたらし、さらにTCの臨床薬剤としての応用も目指す。 明らかになったこと:(1)様々な抗リン酸化抗体による実験結果から、2A型ホスファターゼ(PP2A)が、細胞内のほとんど全てのリン酸化セリン・スレオニンを基質とするのに対して、PP1は基質特異性が大きい。(2)トウトマイセチンで処理した細胞ではサイトカインTNFによる転写因子NF-κBの活性化が抑制される。この事実は、トウトマイセチンがNF-κBの上流であるキナーゼIKKの活性化を抑制する事を示している。またIKKとPP1は恒常的に結合しており、TNF刺激後はIKKの活性の減少と同様な時間経過での受容体へのPP1の結合と解離が観察された。このことからPP1はTNF/NF-κB経路の受容体付近に基質タンパク質をもっており、PP1はTNF/NF-κB経路を正に制御していると示唆される。(3)様々なシグナル伝達系路を調べた結果、PP1はDNA修復および細胞周期制御に重要なATMの基質を脱リン酸化することが示唆された。ATMの基質で有名な分子はp53であるが、本研究では異なった分子が見出され、リン酸化の部位も推定された。 そこで、本年度はこれまでの成果、特に上記(3)で得られたPP1がTNF/NF-κBを正に制御しているという報告者は実験結果を論文として纏め、投稿中である。PP1のさらなる基質を探索すると共に、上記(4)で得られたATMの基質に関して、がんとの関連が推測されるので今後の研究課題として重要であると思われる。
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Research Products
(5 results)