2005 Fiscal Year Annual Research Report
環境変動に伴なう水生菌類の増加を介した湖沼食物網動態の変遷の解明
Project/Area Number |
05J08790
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鏡味 麻衣子 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | ツボカビ / 珪藻 / ミジンコ / 地球温暖化 / 富栄養化 / 寄生 / コレステロール / オランダ |
Research Abstract |
富栄養化と地球温暖化に伴い、植物プランクトンに寄生する菌類の湖沼内での役割が従来より大きくなっている、という仮説の元、菌類の現存量・寄生率の長期変遷とその富栄養化・地球温暖化との関連性について探った。 菌類の現存量および寄生率の長期的な変化を明らかにするために、菌類の出現が確認されている琵琶湖(滋賀県)およびMaarsseveen湖(オランダ)を対象に、湖底泥コアサンプルを採取し、菌類の定量化を試みた。コアサンプルを顕微鏡下で観察したところ、菌類の寄主である植物プランクトン種(珪藻および緑藻)の存在は確認できたが、その遺骸上に菌類の寄生の後は確認できなかった。菌類の定量化には特別なマーカーが必要と考え、現在フランスのチームと共同で菌類種特異的なRNAをベースとしたマーカーを開発している。 地球温暖化と菌類の長期変遷との関連性を探るため、春季の水温の上昇が菌類の個体群動態へ与える影響を大型水槽実験により調べた。水温の上昇パターンを4種類設け、植物プランクトン(珪藻)に対する菌類の寄生率の違いを観察したところ、水温の上昇が早い時期に起こる高温区において最も高い寄生率が得られた。この結果から、地球温暖化は植物プランクトンに寄生する菌類の増加を促進しうることが示唆された。 菌類が潜在的に寄生しうる植物プランクトン種を知るために、過去の菌類に関する研究の文献調査を行った。その結果、菌類は藍藻、珪藻、緑藻、渦鞭毛藻を含む多様な植物プランクトン種に寄生するが、寄生される植物プランクトン種は比較的大型の種類である傾向が見られた。菌類は大型植物プランクトンに寄生したほうが、一回の寄生で得られる栄養塩の量が多いためではないか、と推察された。
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