2005 Fiscal Year Annual Research Report
シロアリの兵隊分化における環境要因と発生制御に関する分子社会生物学
Project/Area Number |
05J08791
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
越川 滋行 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | シロアリ / カースト / 兵隊分化 / 遺伝子発現 / 表現型多型 / 幼若ホルモン / ゲノムサイズ / フローサイトメトリー |
Research Abstract |
社会性昆虫の生態において最も重要な要素であるカースト分化は、生態学・進化学において非常に興味深い対象であるにもかかわらず、その機構に関してまだ未知の部分が多い。本研究ではシロアリの兵隊カーストについて分化時の形態の変化とその機構を形態学・組織学・分子生物学の手法を用いて多面的に解析した。兵隊分化過程で特異的に発現する遺伝子を検出するため、幼若ホルモン類似体JHAで兵隊分化を誘導した個体の大顎からmRNAを抽出しディファレンシャルディスプレー法による探索を行った。得られた遺伝子配列の中で、既知の遺伝子と相同性があり、定量PCRにより発現量の差が確認されたものは12遺伝子であった。これらの多くは前兵隊への脱皮直前に大顎での強い発現が認められている。この成果は欧州生化学連合発行の学術誌FEBS Lettersに発表した(Koshikawa et al.2005)。 また、シロアリのゲノムレベルの網羅的遺伝子発現解析を可能にするためにゲノムシークエンシングプロジェクトが国際的に計画されているが、そのための基礎情報としてシロアリのゲノムサイズのデータが求められていた。そこで今年度は様々な系統に属するシロアリ12種について、フローサイトメトリーおよびデンシトメトリーによってゲノムサイズを測定、比較した。シロアリのゲノムサイズは近縁なゴキブリ類と比べて小さいことがわかり、社会性の進化との関連について考察した(論文準備中)。これらの成果は日本進化学会第7回大会、および国際ワークショップ"Land Management and Biodiversity in Southeast Asia,2005"において研究成果を発表した。
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