2005 Fiscal Year Annual Research Report
一般交換の成立及びそれが人々の心理過程を通じて社会の基盤形成に果たす機能
Project/Area Number |
05J08837
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
真島 理恵 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 協力行動 / 一般交換 / 間接互恵性 / 利他行動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、一般交換成立の理論的仕組みを明らかにすること、及び一般交換が人間の認知・心理、他の社会的問題の解決に与える影響を解明し、一般交換の社会的機能を考察することにある。本年度はまず、これまで生物学を中心に行われてきた先行研究における問題点を解決し、一般交換を成立せしめる理論的仕組みを解明することを焦点とし、一般交換の成立を可能とする戦略を検討するシミュレーション、及び数理解析を行った。具体的には、一般交換成立の条件を数理的に明らかにする数的解析を行い、更に、これまでの研究で主として用いられてきたランダムマッチングという不自然な状況ではなく、より我々の直観にも、理論的妥当性にも合致する、選択的プレイ状況を用いたシミュレーションも行い、そこでの一般交換成立条件を検討した。その結果、一貫した結果として、「利己主義者を排除するのみならず、利己主義者を利する無条件利他主義者をも排除する」ことが、一般交換成立の重要な要件であることが明らかにされた。また、本年度は、この理論モデルにおける結論を実証的に検討するため、質問紙実験の結果を検討するとともに、実験室実験プログラムの作成を行った。実証的検討の第一段階として行われた質問紙実験の結果は、利己的な人に対して利他的に振舞った行為者(=無条件利他主義者)は、利他的な人に対して利他的に振舞った行為者(=選別的利他主義者)に比べ、多くの側面でネガティブに評価され、また利他行動の対象とされにくいことを示すものであった。そこで本年度はこの結果に基づき、一般交換状況において人々が実際にどのように行動するかを検討することを目的とし、実験室実験を行うためのコンピュータプログラムを作成し、予備的実験を行った。今後、予備実験において得られた結果をもとにデザインを精緻化し、一般交換状況における人々の行動傾向を調べる実験室実験を本格的に行う予定である。
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Research Products
(4 results)