2005 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日本の表現文化におけるメディアミックスの分析及び理論的枠組の構築
Project/Area Number |
05J08844
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横濱 雄二 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本近現代文学 / メディアミックス / サブカルチャー / アニメーション / 映像 |
Research Abstract |
1.様々な物語メディアを横断するメディアミックスのあり方について、特にそのリアリティの構築を考える際の参考として、民俗学、精神分析などの理論を参考とし、また文学史や文学理論についても諸作を参照している。その成果の一部として、幻想文学に関する論文集である『ナイトメア叢書1 ホラー・ジャパネスクの現在』のブックガイド欄を分担執筆した。 2.複数のメディアで展開される作品を把握する視座を構築するためのメディアミックス作品の実例分析として、『新世紀エヴァンゲリオン』を題材に考察した。本作では最初に発表されたTVアニメ及びアニメ映画において、互いに矛盾を持つ四つの物語世界が含まれており、この物語世界の構成はコンピューターゲームの事例でも踏襲されている。アニメとゲームの両者を分析すると、複数の物語世界は無関係な分立ではなく、相互に表現や描写の矛盾として現れる交渉が存在している。こうした物語世界の交渉という性質を踏まえることが、メディアミックスの理解に一定の可能性を切り開くことになる。この成果は日本近代文学会春季大会(平成17年5月・開催地札幌)で発表のうえ、論文化した。 3.昭和期の実例としては、菊田一夫『君の名は』、石原慎太郎『太陽の季節』、柴門ふみ『東京ラブストーリー』に関しては、関連文献および映像作品などの入手と分析を行い、これは現在も継続している。また、横溝正史の金田一耕助シリーズから、『八つ墓村』をとりあげ考察した。従来は伝統的なムラ社会の因習として詳細に分析されてこなかった作品空間の閉鎖性を、民俗学の成果を援用しつつ、社会的閉鎖空間という形で定式化した。その成果は諸岡卓真との共著で論文化した(近刊)。
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