2005 Fiscal Year Annual Research Report
民事責任の陥穽と現代における「新しいリスク」への対応
Project/Area Number |
05J08856
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今野 正規 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 民事責任 / リスク / 不法行為責任 / 契約責任 / 民法 |
Research Abstract |
本研究は、近時のリスクに関する議論に即して、事前の予見可能性や結果回避可能性を前提に帰責を考える従来型の民事責任論に批判的な立場から、民事責任論を多面的かつ理論的に行うことを目的に進められている。こうした目的のもとに、本研究は、従来型の民事責任論を成立せしめている条件及びその限界を明らかにすること、それを踏まえて、現代におけるヨリ適切な民事責任論のありかたを提示することのふたつを対象とするものであり、本年度は、このうちの前者を念頭に研究が進められた(なお、本年度は、後者の研究を進めるうえでも重要となるシックハウスや塵肺の訴訟当事者に直接話を聴く機会を得られたことも付記しておきたい)。 研究手法としては、当初、学説・判例を中心に「新しいリスク」への対応を模索することを予定したが、研究を進めるうちに、従来の議論の条件及び限界を明らかにするには、こうした手法による分析では不十分であることがわかり、直ぐに民事責任論の変遷をヨリ一般的な社会の変遷の文脈に位置づけなおすかたちで問題を立て直し、当初の予定より広く文献研究・理論研究を進めることにした。その結果、近時、著しい進展がみられるフランス社会思想史からの示唆をもとに、民事責任論の変遷が各時代における支配層・統治層の社会秩序観(これはリスクに対する社会政策として顕示される)と密接な関係にあること、及びそうした社会秩序観の依拠するイデオロギーが、各時代の民事責任論の成立する条件とその限界を示唆するものであることなどが明らかになった。 以上の研究成果については、問題の大きさゆえに、未だ発表に至っていないが、今後も研鑽を積み、できるだけ早く、成果の公表に努めることにしたい。
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