2006 Fiscal Year Annual Research Report
熱力学的解析に基づいた競合状態におけるDNA間結合の特異性に関する研究
Project/Area Number |
05J08891
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 文昭 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | DNA計算 / 結合の特異性 / 自由エネルギー / 競合状態 / 塩基配列設計 |
Research Abstract |
本年度の研究は,複数のDNAが溶液中に存在してハイブリダイゼーションするような競合状態の解析を主眼として進めてきた.成果としては,(1)競合状態を解析する実験手法の確立,(2)競合状態において二本鎖の生成割合を予測するモデルの提案の二つに要約できる. まず(1)であるが,競合状態の解析においては,複数種類生成される二本鎖の割合を実験的に計測する必要がある.そこで,FAMという蛍光物質とDabcylと呼ばれるクエンチャー物質を利用することにより,ある特定の二本鎖の生成割合を計測する手法を確立した. 次に,上記の実験手法を用いて,二本鎖の生成割合を予測するモデルの提案・検証を行った.予備実験の結果から,二本鎖の安定性の尺度であるTmやΔGminの差が生成割合に寄与していることが分かった.そこで,「生成割合=f(Tm(ΔGmin)の差)」という関数を用いて予測が可能かどうかを検証した.尚,関数fは,熱力学的な考察に基づき,シグモイド関数を変形した関数として定義した.このように定義したモデルを実測値にフィッティングさせ,χ二乗検定によりモデルの当てはまりを計算した結果,30mer以下の比較的短い配列であれば,二本鎖の生成割合を精確に予測できることが示された.また,40mer以上の長い配列であっても,Tmが10℃以上異なっていれば,安定な二本鎖がほぼ100%生成されることが示された.これらの結果は,DNAコンピューティングにおいて熱力学的なシミュレーションを行う際や塩基配列を設計する際に有用なデータとなる.特に,自身の相補配列とのみ結合する特異的な配列を設計する際の指針として上記の結果を用いることが可能であり,DNAコンピューティングにおけるシステマティックな設計論の確立に寄与すると考えられる.
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