2006 Fiscal Year Annual Research Report
赤外領域円二色性(VCD)を利用した複合糖質等の新規キラル分析法の開発と応用
Project/Area Number |
05J08920
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷口 透 北海道大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 赤外円二色性 / 複合糖質 / キラル / 密度汎関数法 / 天然物 / 絶対立体化学 / 過酸化物 |
Research Abstract |
新たなキラル分光法である赤外円二色性(VCD)を用い各種複合糖質、天然物、さらには液晶分子や金属錯体、らせん状分子などに精力的に応用し、従来法では解析困難な各種の構造や物性に対してVCDが極めて有効であることを示した。VCDは分子振動遷移における赤外領域での左円偏光と右円偏光の吸収の差を観測する。 糖類への応用については、網羅的な糖VCDデータベースの構築により、糖ユニットの識別、糖の結合位置の識別、そしてグリコシド結合の立体化学がVCDによって簡便に識別しうることを示した。さらに、糖のモデル化合物を作製することにより、初めて糖VCDの理論計算を信頼性高く行うことに成功した。これにより、今まで経験則によってのみ行われてきたVCDによる糖の構造解析が、半経験的・非経験的に行える可能性が示された。さらに、糖ペプチド・糖脂質へもVCDを初めて応用し、複合糖質の糖部分とアグリコン部分を同時に解析しうることを示した。 また、天然物の解析について、紅藻由来の含ブロモセスキテルペン系化合物の絶対立体化学の決定を行った。本研究では初めて過酸化物にVCDを応用し、その絶対立体化学を帰属した。過酸化物化合物は特異な生理活性が着目されているものの絶対立体化学決定が困難な分子群であり、本結果の利用により関連研究がさらに加速されるものと期待される。 最後に、パーフルオロアルキル鎖が溶液中においてらせんを巻いていることを初めて明らかにし、そのらせんの巻き方向をも帰属できることを示した。
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Research Products
(6 results)