2005 Fiscal Year Annual Research Report
位相制御されたダブルパルス励起による光電子移動反応の量子制御
Project/Area Number |
05J08936
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笠嶋 辰也 北海道大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 位相制御ダブルパルス / 量子制御 / 位相緩和 / コヒーレンス |
Research Abstract |
本年度は研究目標「現行装置の改良と蛍光性分子の位相緩和時間測定」のもと、『蛍光性分子』に対しての量子干渉実験手法の確立を目指した。 1.『蛍光性分子』をサンプルに用いた量子干渉実験の結果について フェムト秒レーザーパルス(半値全幅:42fs)をマイケルソン干渉計に導入し、遅延時間をもったダブルパルスを発生させた。このとき可動鏡側に液晶位相変調素子を置き、ダブルパルス間の相対位相を約45asの精度で制御した。この位相制御ダブルパルスを励起光源とし、THF溶液中のテトラフェニル亜鉛ポルフィリン(ZnTPP)に対して電子励起状態波動関数を量子干渉させる実験を行なった。具体的には、ZnTPPのSoret帯(422nm)を励起し、Soret蛍光(430nm)およびQ蛍光(654nm)に含まれる量子干渉(QI)信号を測定した。実験および解析の結果、Soret蛍光に含まれるQI信号の振幅の減衰時間から、電子位相緩和時間が<20fsであることが分かった。また、Soret蛍光およびQ蛍光に含まれるQI信号のフーリエ解析によって、フランク-コンドン状態上に生成された波動関数の量子位相は、溶媒和過程(422nmから430nmへのストークスシフト)によってランダム化されてしまうことが分かった。 2.現行装置の改良について ZnTPPの他、いくつかのサンプルで量子干渉実験を行った結果、本研究で用いたレーザーパルス(半値全幅:40-50fs)に対して、常温・溶液中における多原子分子の電子位相緩和時間はもっと短いことが分かった。そこで、新たに導入された半値全幅8fsのレーザーを用いて実験装置を組み直すことにした。これによって、励起パルスのスペクトル幅が大幅に広がったため、当初の装置改良の計画を若干修正する必要が生じた。
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