2005 Fiscal Year Annual Research Report
NMRによる精密構造解析法を駆使したポリフェノール類の酸化反応機構の全容解明
Project/Area Number |
05J08942
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齊藤 静夏 北海道大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 抗酸化物質 / ラジカル消去反応 / ポリフェノール / プロトカテキュ酸 / コーヒー酸 |
Research Abstract |
アルコール中でプロトカテキュ酸がそのエステルと比較して低いラジカル消去活性しか示さないのは、カルボキシ基の解離により電子求引性が大幅に低下したためであると予想された。そこでC-1置換基の電気的性質がラジカル消去反応に与える影響について検討した。C-1に電子求引および供与性基をもつ種々のカテコール化合物のDPPHラジカル消去活性を測定したところ、アルコール中ではC-1置換基の電子求引性が強いほどラジカル消去当量が大きくなることを見出した。キノン体のLUMOのエネルギーはC-1置換基の電子求引性が強いほど低いことから、強い電子求引性基をもつ化合物ではキノン体へのアルコール分子の求核付加が起こりやすく、カテコール構造の再生が促進されて結果的にラジカル消去当量が増大すると考えられた。また、プロトカテキュ酸がそのエステルよりもアルコール中でラジカル消去活性が低い原因は、キノン体においてカルボキシ基の解離が促進されることにより、電子求引性が低下し、キノン体への溶媒分子の求核付加が起こりにくくなるためであることが明らかとなった。 野菜類に多く含まれているポリカフェオイルキナ酸のラジカル消去活性を測定したところ、分子内コーヒー酸残基同士の距離が近接しているほど活性が高い傾向が見られた。そこでコーヒー酸残基の位置関係が異なる種々のジカフェオイルオキシシクロヘキサンのラジカル消去活性を比較した結果、分子内コーヒー酸残基同士が近接しているほどラジカル消去活性が高くなることがわかった。また反応液中から分子内コーヒー酸残基同士のカップリング生成物を単離することに成功した。これらの結果から、分子内コーヒー酸残基同士の近接によるラジカル消去活性の増大は、ジカフェオイルオキシシクロヘキサンの酸化によって生成した分子内のキノン体同士がカップリングして、カテコール構造が再生されたためであることが明らかとなった。
|
Research Products
(2 results)