2005 Fiscal Year Annual Research Report
リン脂質の膜配向性制御とアクチン細胞骨格系制御機構に関する研究
Project/Area Number |
05J08974
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
斉藤 康二 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リン脂質 / 細胞膜非対称性 / アクチン細胞骨格 / 細胞極性 / 出芽酵母 / アミノリン脂質トランスロケース / フリップ / Cdc42 |
Research Abstract |
一般に真核生物の生体膜脂質二重層はその内外で様々な脂質が非対称に分布しており、その非対称性の形成、維持には能動的に脂質を内外に運ぶ輸送分子が働いていると考えられている。例えばアミノリン脂質トランスロケース(APT)は外層(細胞外側)から内層(細胞質側)ヘリン脂質を運ぶ働き(フリップ活性)があることが示唆されている。近年高等動物では、リン脂質の膜非対称性の変化が細胞極性形成に重要な役割を果たしていることが示唆されている。しかしその詳細な分子機序についてはほとんど分かっていない。本研究は、真核生物のモデル系として出芽酵母を用い、リン脂質の膜配向性制御とアクチン細胞骨格系制御機構との関連を明らかにすることを目的としている。本年度において以下に示す成果が得られた。 1.出芽酵母はその出芽過程で、最初芽を一定方向に伸長(頂端成長)させ、ある程度芽が成長すると等方性の成長をするようになる。この成長の変化は、出芽酵母おいて細胞極性形成に中心的な役割を果たすアクチン細胞骨格の再分布によって支えられている。細胞形質膜上のAPTが機能せず、リン脂質の膜非対称性が崩れる遺伝子変異株(lem3遺伝子欠損株)では、アクチン細胞骨格の再分布が正常に起こらず、等方性の成長が長く続くことに野生型より細長い形態になる。このアクチン細胞骨格の再分布の異常と一致して、様々なアクチン細胞骨格制御因子が等方性の成長をするような時期になっても頂端成長に特徴的な局在を示すことが明らかとなった。 2.lem3遺伝子欠損株を用いた解析から、アクチン細胞骨格制御因子の一つで、アクチン細胞骨格形成に重要な役割を果たす低分子量蛋白質であるCdc42が、なんらかのかたちで細胞形質膜上のリン脂質の膜非対称性の変化の影響を受けていることが示唆された。 3.上記内容を第78回日本生化学会大会で発表(口頭発表)した。
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