2005 Fiscal Year Annual Research Report
ポリリン酸によるタンパク安定化が転写調節機構におよぼす役割
Project/Area Number |
05J08986
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川添 祐美 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ポリリン酸 / シグナル伝達 / 繊維芽細胞増殖因子(FGF) / ERK1 / 2 / HUVEC |
Research Abstract |
これまでの研究でポリリン酸がある種のタンパクを安定化し、それが細胞の生理機能に影響を及ぼしていることがわかっている。本研究ではこうしたポリリン酸によるタンパク安定化が細胞の機能に与える影響について調べることを目的とした。 これまでにポリリン酸が繊維芽細胞増殖因子を安定化し、それによって繊維芽細胞の増殖が促進されることが報告されているが、本研究ではヒト歯髄より採取した細胞(HDP細胞)を用い、同様にポリリン酸による増殖促進効果が見られるか調べた。この細胞は間葉系幹細胞を多く含んでいる。増殖期のHDP細胞にポリリン酸を作用させると、細胞増殖が顕著に促進されることがわかった。ポリリン酸処理後45時間における細胞増殖率を比較したところ、ポリリン酸処理群では無処理群の約1.74倍であった。また細胞内でautocrineとして働いているFGFタンパクをポリリン酸が安定化するだけでなく、細胞表面に存在するFGFレセプターとFGFタンパクの結合にもポリリン酸が関与していることがわかった。またリコンビナントFGFを用いて、ポリリン酸によるFGFタンパクの長期安定化について調べたところ、ポリリン酸存在下では10日間においても多くのFGFが安定に存在することがわかった。これらの結果より、HDPの増殖にはポリリン酸によるFGFの機能亢進が深く関わっていることが示唆された。次に、FGFによる細胞増殖促進のメカニズムを調べる目的で、MAPKの一つであるERK1/2のリン酸化について調べたところ、ポリリン酸処理群でERK1/2のリン酸化が促進されており、ポリリン酸がFGFの安定化だけでなく細胞内でのシグナル伝達にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。 また、血管形成もFGFが関与する現象の一つであるといえる。HUVEC細胞を用い、ポリリン酸が細胞増殖および細胞遊走に及ぼす影響について調べたところ、いずれに対しても濃度依存的に促進効果を示すことがわかった。 以上の結果より、ポリリン酸が細胞の種々の生理機能に対して影響を及ぼすことが示唆される。ここで得られた結果について、現在はそれぞれのメカニズムを解明するための研究を行っている。
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