2006 Fiscal Year Annual Research Report
冬虫夏草菌を用いての害虫防除を目的とした基礎的研究
Project/Area Number |
05J09011
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 史 北海道大学, 大学院農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 昆虫病原性糸状菌 / 冬虫夏草菌 / バイオロジカルコントロール / 総合防除 / 分子マーカー |
Research Abstract |
本年度も害虫防除への使用が期待できる冬虫夏草菌の探索を行った。その結果、新たに採取された冬虫夏草菌において、同翅亜目昆虫の幼虫に寄生し発育も比較的迅速で分生子および酵母様細胞を頻繁に形成する特殊な形質を持つ菌が見つかった事から、形態および遺伝子のITS領域を決定などの精査、記載を行った。カメムシタケにおいては北海道以外の本州数箇所より採取を行い、寄主の種ごとに供試菌株を分け、寄主の種に因り遺伝子に差異が見られるかどうか、rDNAのITS領域におけるシーケンシングにより検討を行った。その結果、ヘリカメムシ科のカメムシに寄生を行っていたカメムシタケは他科のカメムシに寄生を行っていたものと別のクラスターを形成した。Kimura 2 parameter modelによる遺伝的距離は0.09以上となり、別種並みの遺伝的距離となった。また、ヘリカメムシ科に寄生を行っていたものは、GenBank登録の海外産のものと遺伝的に近く他科カメムシに寄生していた日本産のものとは別クラスターを形成したことから、ヘリカメムシ科以外のカメムシに寄生を行う日本産カメムシタケは固有種である可能性も示唆された。現在、子嚢果、子嚢、子嚢二次胞子などの部位における形態的特徴の相違の検討を行っているところである。この結果より、現段階ではダイズなどを加害するヘリカメムシ科の防除に用いられる系統とピーチ、ヨウナシなどを加害するカメムシを寄主にもつカメムシタケの系統に辿伝的には分かれる結果となった。そこで防除担体として使用した際により良い散布方法などを調べるのに役立つ自然界での生態知見を得る場合や散布した際の消長、拡散度などを土壌中などから簡便に検出できるような特異的マーカーの作成を行った。マーカーはPCR法に用いるプライマーとし、1つはヘリカメムシ科に寄生するカメムシタケも含めて特異的に増幅できる配列、もう1つは他科カメムシに寄生を行うカメムシタケのみを特異的に増幅できる配列で作成を行なった。
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