2005 Fiscal Year Annual Research Report
深過冷却で凍結に適応する落葉広葉樹木部柔細胞由来の過冷却促進成分の同定と機能評価
Project/Area Number |
05J09014
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
春日 純 北海道大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 寒冷適応 / 落葉広葉樹 / 木部柔細胞 / 深過冷却 / 氷核形成阻害 |
Research Abstract |
北方樹木の木部柔細胞は、深過冷却により冬季の氷点下温度に適応している。本研究では、木部組織内に存在する過冷却促進成分の探索を行うことで、木部柔細胞の深過冷却機構の解明を試みている。これまでに、シラカンバの木部組織由来の粗抽出画分が氷核形成阻害活性を示すことを見出した。本年度に行った研究により、さらに以下のような新たな知見を得た。 1.多くの落葉広葉樹が木部組織内に氷核形成阻害物質を有する 木部柔細胞が深過冷却をする5種類の落葉広葉樹を用いて当該活性の測定を行ったところ、全ての樹種の木部組織から抽出した粗抽出画分から氷核形成阻害活性が検出された。このことから、シラカンバのみではなく木部柔細胞が深過冷却をする落葉広葉樹の木部組織には、広く氷核形成阻害物質が存在することが示唆された。(PlantBiology2005(シアトル):ポスター発表) 2.落葉広葉樹木部組織由来の粗抽出画分は様々な溶液において氷核形成を阻害する シラカンバ木部由来の粗抽出画分はヨウ化銀のみではなく、氷核細菌であるErwinia ananasやPseudomonas syrigaeの氷核形成活性も阻害した。また、氷核形成物質を加えない溶液の氷核形成温度も低下させた。このことは、この粗抽出画分が様々なかたちの氷核形成に対し、有効な過冷却促進剤となる可能性を示している。(PlantBiology2005(シアトル)、Cryo2005(ミネアポリス):ポスター発表) 現在、氷核形成阻害物質の単離を試みている。これまでに、薄層クロマトグラフィーにて当該活性物質と思われる成分のスポットを特定することができた。この物質の構造解析を行うため大量精製と各種スペクトル分析による構造解析を進めている。
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