2005 Fiscal Year Annual Research Report
クリプトビオシス動物における極限環境耐性に関する研究
Project/Area Number |
05J09037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀川 大樹 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 放射線耐性 / クリプトビオシス |
Research Abstract |
クマムシの一種、オニクマムシMilnesium tardigradumは、周囲の水がなくなると完全に脱水して半永久的な乾燥休眠状態、クリプトビオシスに陥る。クリプトビオシス状態にあるクマムシは、様々な種類の極限環境に対する耐性を持つことが知られている。本研究では、活動状態およびクリプトビオシス(乾燥休眠状態)に陥ったM.tardigradumに対してさまざまな線量のγ線およびHeイオンビームを照射し、生存判定を行い耐性能力を検証した。また、電離放射線は、生物にとって致命傷となるDNAの二本鎖切断を招く。この損傷がどの程度起きているかを検出するため、コメットアッセイ法を用いた予備実験をγ線照射個体を用いて行った。まず、M.tardigradumの体内の水分含量率を精密電子天秤を用いて推定したところ、活動状態時で80.73%、クリプトビオシス状態時で1.09%だった。M.tardigradumに対する致死的作用は、γ線の方がイオンビームよりも高かった。また、γ線とイオンビームの両者の照射において、活動状態の個体の方がクリプトビオシス状態の個体よりも、耐性が高い傾向が見られた。一般に、生物への放射線の影響は、生物体内に存在する水を介して生じるラジカルによって損傷を受ける(間接作用)が主とされているため、水をほとんど含まないクリプトビオシス状態の個体の方が水を多量に含む活動状態の個体よりも死亡率が高くなった原因については、現段階では説明できない。コメットアッセイを用いたDNA二本鎖切断の検出を試みたが、0Gyと3000Gyの両者で有意な差が見られず、今後のさらなる条件設定の模索を行いたい。
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