2006 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙黎明期に形成された低質量星における中性子捕獲反応と重元素の合成
Project/Area Number |
05J09072
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 高徳 北海道大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 種族III星 / 中低質量星 / 元素合成 |
Research Abstract |
近年、表面の重金属が少なく非常に古いと考えられる星が銀河系のハローで発見され、その観測数は徐々に増えつつある。これらの星の元素組成パターンには太陽との違いが顕著な特徴がみられ、その古さからも銀河の化学進化と関連して注目されている。 本研究ではこのような宇宙初期の中低質量星内、即ち重金属元素がまったく存在しない環境での元素合成を調査してきた。このような環境下では、漸近巨星分枝段階において星のヘリウム層でヘリウムが爆発的に反応した際に、上層から水素が混ざりこむ。これは重金属元素が存在する場合、即ち例えば比較的最近に我々の銀河内で形成された太陽のような星には起こり得ない、特異的な現象である。混合によってヘリウム層に持ち込まれた水素はこの層で豊富に存在する炭素と反応し、酸素を合成する過程で中性子を生ずる。中性子は重元素合成過程で重要な役割を担う中性子捕獲反応を促し、従ってその星の元素組成は特徴的なものになる。この混合誘起の中性子捕獲過程で合成される元素の組成パターンは、冒頭で述べた非常に金属の少ない星の組成パターンを全てではないにしても、説明できることは昨年の報告書で述べた。上記過程による組成パターンへの影響が理解されれば、観測される星のデータからその星が形成された宇宙初期の情報へのアプローチが可能となり、その意味でも本研究は意義深い。 上述の混合はどのようにして起き、進行するのかの詳細は依然として明らかにされていないが、本研究で得られた知見を基にその詳細に迫ることが可能である。これを踏まえ、様々な状況を考慮して混合を定量的に扱うため、複数のパラメータを用いて調査を進めている。現在のところ、明らかになっているパラメータ依存性から読み取ると、混ざりこむ水素の量に強く依存するものの、その混ざり具合によってもやはり違いがあり、更に温度の違いによる依存性も加わって複雑な様相を呈することになる。
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