2006 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳停止に伴ったシスタチオニンγ-シンターゼmRNA安定性制御機構の研究
Project/Area Number |
05J09138
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原口 雄飛 北海道大学, 大学院農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シロイヌナズナ / シスタチオニンγ-シンターゼ / 翻訳停止 / mRNA安定性制御 / S-アデノシルメチオニン / 分子生物学 |
Research Abstract |
シロイヌナズナのシスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)遺伝子では,新生ポリペプチドがcisに作用することでmRNAを翻訳中のリボソームが一時的に停止し,それに伴ってmRNA分解が促進される.このような翻訳停止と共役したmRNA安定性制御は大変珍しく,その詳細な分子機構の解明は大きな課題である.この制御は試験管内翻訳系により再現され,そのエフェクターであるS-アデノシルメチオニン(SAM)の添加に応答して5'領域を欠いたmRNA分解中間体が蓄積する.今年度は次の成果を得た. 1.他のmRNA分解経路で働く既知因子が破壊されたシロイヌナズナ変異株を取得し,それらがCGS mRNA分解に関与するかを検討した.酵母の一般的なmRNA分解経路で働くXRN1と,翻訳と共役して起こるという点でCGS mRNA分解と類似しているNonsense-mediated mRNA decay経路で働くUPF3について解析を行ったが,いずれの変異株でもCGS mRNA分解中間体の蓄積量や末端位置は変化しなかった.よって,CGS mRNA分解経路はこの2つとは異なることが示唆された. 2.試験管内翻訳後の翻訳産物を解析したところ,SAM添加時特異的に複数種類の部分翻訳産物が検出された.これらのうち最も大きなものはPAGE解析において翻訳停止位置までの翻訳産物と同じ泳動度を示し,それより分子量の小さなものは1つのリボソームがmRNAを覆う範囲分ずつずれて泳動された.試験管内翻訳に用いるmRNAの濃度を段階的に上げ,1分子のmRNAを翻訳するリボソームの数を相対的に減少させたところ,部分翻訳産物は分子量の小さなものから順に検出されなくなった.以上の結果と前年度に行ったmRNA分解中間体の解析結果から,SAMに応答して停止したリボソームを先頭に,複数個のリボソームが連なって停止することが示された.
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