2005 Fiscal Year Annual Research Report
紅藻スサビノリの世代特異的な発芽・発生過程を営む各種胞子における細胞生物学的研究
Project/Area Number |
05J09153
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
植木 知佳 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スサビノリ / 発芽 / 発生 / 微細構造 / 細胞生物学 |
Research Abstract |
本研究はスサビノリの配偶体世代,胞子体世代を繋ぐ果胞子,殻胞子,単胞子に焦点を当て,それらの発芽・発生過程について透過型電子顕微鏡観察を始めとした細胞生物学的手法を用いて調査することを目的としている.本年度は,急速凍結置換法により電子顕微鏡用試料を作製し,配偶体細胞と胞子体細胞の微細構造について,更に各種胞子の発芽・発生過程における諸現象について詳細に観察を行った.また,電子顕微鏡観察を行う際の予備的知見として光学顕微鏡観察を行い,スサビノリ野生型ならびに緑色変異体との交配株が持つ特徴的な形質についてまとめた報告が水産学会誌(水産増殖)に掲載された. 果胞子の発生過程のおいて,放出後直ちに柔軟に形態を変化させ,移動する変形運動を開始し,その後基質に着生して細胞壁形成が起こることが明らかとなった.また,それらの発芽体をトルイジンブルーあるいはカルコフルオール等で染色したところ胞子部分と糸状体部分では細胞壁の組成が異なることが明らかとなった.これは,微細構造観察からも推察することができた.これらの結果は,タイで開催された第4回アジア太平洋藻類学フォーラムで報告した. 胞子体世代にのみ形成されるピットプラグの形成は細胞質分裂に伴って生じる.急速凍結置換法を用いてその過程を詳細に観察することで,化学固定法による過去の報告とは異なる構造が示された,すなわち2つの細胞に接するピットプラグの両側は2重の細胞膜で,側面は1重の細胞膜で包まれていた.また,スサビノリとは異なる構造を持つ紅藻2種(ダルス,ヘラリュウモン)に関しても急速凍結置換法により電子顕微鏡用試料を作製し,微細構造を比較した.得られた知見は,紅藻における大きな分類形質であるピットプラグの分類様式を再評価するものと考えられる.この結果は日本藻類学会で報告した.
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Research Products
(1 results)