2006 Fiscal Year Annual Research Report
紅藻スサビノリの世代特異的な発芽・発生過程を営む各種胞子における細胞生物学的研究
Project/Area Number |
05J09153
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
植木 知佳 北海道大学, 大学院水産科学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スサビノリ / 発芽 / 発生 / 微細構造 / 細胞生物学 |
Research Abstract |
本研究はスサビノリの配偶体世代,胞子体世代を繋ぐ果胞子,殻胞子,単胞子に焦点を当て,それらの発芽・発生過程について透過型電子顕微鏡観察を始めとした細胞生物学的手法を用いて調査することを目的としている.本年度は,以下の3項目について研究を行った。 1.胞子体世代にのみ形成されるピットプラグの形成過程について観察を行った。急速凍結置換法を用いて詳細に観察したことで,化学固定法による過去の報告とは異なる構造が示された,すなわち2つの細胞に接するピットプラグの両側は2重の細胞膜で,側面は1重の細胞膜で包まれていた.また,スサビノリとは異なる構造を持つ紅藻2種(ダルス,ヘラリュウモン)に関しても急速凍結置換法により電子顕微鏡用試料を作製し,微細構造を比較した.結果,スサビノリで示された構造はスサビノリに特徴的であることが分かった。得られた知見は,紅藻における大きな分類形質であるピットプラグの新しい様式であるとして、国際学会誌に投稿した。 2.配偶体(キシラン,マンナン)ならびに胞子体(セルロース)細胞の細胞壁成分が大きく異なることに着目し,微細構造の観察ならびに組織化学的な実験を行ってきた。上記のような細胞壁の組成の違いは微細構造も強く反映しており,胞子体では明瞭な繊維状構造が観察された.また,胞子体に成長する果胞子の発芽体に関しては,トルイジンブルーあるいはカルコフルオール等で染色したところ胞子部分と糸状体部分では細胞壁の組成が異なることが明らかとなった.これは,微細構造観察からも推察することができた. 3.配偶体に形成される造精器細胞に関して核分裂を光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡観察を行った.また,紅藻に特徴的である分裂極に見られる紅藻細胞に特徴的なポーラーリングの挙動についても分裂周期を通して明らかにした.この結果は日本藻類学会で報告した.
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