2005 Fiscal Year Annual Research Report
サケ科魚類の母川記銘・回帰に関与する嗅覚機能に関する生理学的研究
Project/Area Number |
05J09156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 雄三 北海道大学, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 母川記銘 / 嗅覚応答 / アミノ酸 / プロリン / 脳波ロガー / 嗅球誘起脳波 / ヒメマス / ニジマス |
Research Abstract |
1.人工アミノ酸河川水を用いた母川記銘実験 天然水に存在しないアミノ酸(Pro)を添加し、アミノ酸組成を大きく変化させたものを人為的に母川のニオイ物質としてヒメマス幼魚に記銘させることができるか否かを検証することを目的に母川記銘実験を実施した。実験水(Pro添加)に暴露した記銘群の電気生理学的な嗅覚応答(EOG)を測定し、実験水(Pro添加)に暴露していないコントロール群と比較したところ、3月から6月までのPro記銘群の実験水に対する応答強度は、コントロール群のものと比較して大きくなる傾向が見られた。しかし、7月ではPro記銘群は他の月のPro記銘群より実験水に対する応答性は低くなった。また、Pro記銘群およびコントロール群の実験水に対する嗅覚応答強度の月変化はみられなかった。以上の結果、これまで母川記銘時期と考えられてきたスモルト時期だけでなく、その前後においても母川記銘される可能性が考えられた。 2.脳波ロガーを用いたサケ科魚類の遊泳行動解析 脳波ロガーを用いて自由遊泳中のニジマスから嗅球誘起脳波の測定を試みた。麻酔下においてロギングしたデータを解析した結果、嗅球誘起脳波は安定して記録されており、匂い刺激に対する振幅の増大も鮮明に記録されていた。一方、Y字水路内で自由遊泳させた場合の嗅球脳波は麻酔下のそれと比較してノイズを多く含み、また魚が水路の壁に衝突した際の大きなノイズが記録されていた。自由遊泳行動中にはノイズ記録の原因となりうる様々な要因が考えられる。麻酔下と同じ応答が発現していたとしても、多くのノイズが存在すれば脳波の変化が不明瞭になる。したがって、今後は電極の振動を抑える、ロガーと電極の距離を短くするなど、さらにノイズを抑える為の改良を施す予定である。
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