2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヴェトナム手工業村落の形成-考古学、民族考古学、近現代史研究からの分析-
Project/Area Number |
05J09186
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 範子 (西野 範子) 大阪大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フーラン村 / 合作社時代 / 陶器生産 / 窯業 / キムラン村 / 和田理佐衛門 / 安南 / バッチャン |
Research Abstract |
本年度は、民族学的調査および、キムラン村発掘報告書作成を中心に行った。 フーラン村(社)においては世帯調査を中心に行い、1971年の洪水および合作社における組織編成以降、同じフーラン社中村から分村したトゥーコン村、ファンチュン村の世帯内の各個人の生業、仕事内容、窯業への関わりの変化などを調査した。フーラン社全体の窯数の変遷を調査し、トゥーコン村では廃業した窯がほとんどないのに対して、ファンチュン村では生産窯が年々減少していく現象に着眼し、2村落の窯業に対する関わり方や意識の違いなどを分析した。その結果、ファンチュン村では分村後、他村落内の村人との婚姻する機会が増えたこと、合作社時代の後半に窯業を行わなかったことにより、世帯内、親族内において窯業経験者数が減少したことが直接的な原因であることが明らかとなった。キムラン村では新しい生業としての窯業への思い入れが低く、バッチャンの下請けや隙間産業を狙って生産する世帯が多いこと、近年販売に伸び悩み廃業する世帯が増加していることが分かった。 遺物研究としては、日本で伝世し、茶道具として使用されてきたと考えられるベトナム陶磁器(安南)を分析し、それらの多くが注文生産の可能性が高く、17世紀前半に位置づけられるものがほとんどであること、さらに、バッチャンに嫁いだ和田理左衛門の娘である「著」が嫁いだ年代と合致することから、和田理左衛門が茶道具としてのベトナム陶磁器の注文生産に関わり、貿易した可能性が高いことを明らかにし、『東洋文化 伝統と統合』に論文を執筆した。キムラン村の遺物研究からは、ベトナム陶磁の特徴ともいえる高台内の鉄銃を持つ碗皿に焦点をあて、変遷と年代観を明らかにした。『考古学の新発見2006』に掲載される予定である。 キムラン村の発掘報告書を英語で出版する為、日本、ベトナム、英語で執筆した論文と新しく加わった知見を加え、約7割が完成した。
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