2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J09227
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 弘樹 大阪大学, 社会経済研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 制度設計 |
Research Abstract |
今年度は純粋交換経済における財の配分問題、および純粋公共財供給問題の研究を行った。どちらの問題も市場に任せた配分方法においては効率性が達成されるものの、インセンティブの面で深刻な欠点をもつことがよく知られている。すなわち、各個人がプランナーに虚偽の申告をしてただ乗りをすることが可能となり、結果として効率性が損なわれる可能性が生じる。よって制度設計者が、ある制度(メカニズム)を設計する際には、戦略的虚偽表明を防止する制度を設計する必要がある。現在に至るまでそのような制度を設計する研究が盛んに行われているが、前述したように純粋交換経済および純粋公共財供給という二つの状況においてこの問題を研究した。 まず一つ目は純粋交換経済について。こちらは前年度から引き続きの研究である。一般的に、いくつかの望ましい性質を持つメカニズムを設計する際、個人が持つタイプの集合が小さくなるほど多様なメカニズムがその性質を持ちうる。よってタイプの集合を縮小したときのメカニズムの特定化は意味があり、特にタイプの集合を準線形の選好に限ったときのメカニズムの特定化を試みた。 次に公共財供給問題について。この問題における戦略的虚偽表明を防止する制度の中で最もよく知られたものはピボタル(クラーク)・メカニズムである。このメカニズムはいくつかの欠点を持つことが以前から指摘されている。その中の一つは、適用できる環境が、各個人が準線形型の選好を持っている場合に限られることである。そこで我々は、個人が非準線形の選好を持っている場合にも適用できて、かつピボタル・メカニズムの自然な拡張となっているようなメカニズム(拡張ピボタル・メカニズム)を提案し、追加的な条件を満たす唯一のメカニズムが拡張ピボタル・メカニズムであることを示した。この結果はグリーン・ラフォントの不可能性定理と強く対照的なものである。
|