2006 Fiscal Year Annual Research Report
非線形偏微分方程式に対する均質化問題への後ろ向き確率微分方程式によるアプローチ
Project/Area Number |
05J09265
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
市原 直幸 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Hamilton-Jacobi方程式 / 粘性解 / 確率制御 / 弱KAM理論 |
Research Abstract |
非線形編微分方程式の中でも重要な方程式の一つであるHamilton-Jacobi方程式に対するCauchy問題の解の長時間挙動に関する成果を得た.具体的には,長時間経過後に解がある種の定常状態へ収束することを適当な条件の下で示し,その定常状態の詳しい性質を考察した.係数および初期条件に周期性のある場合はいくつかの先行研究が存在する一方で,周期性が少しでも崩れた場合の解の収束は一般には保証されないことが知られている.私は石井仁司氏(早稲田大学)との共同研究において,係数および初期条件がある種の概周期的な構造を持つ場合は,与えられた方程式の解が適切な意味で収束することを示し,定常状態の構造に関する結果を得た.定常状態を記述する方程式の解の特徴付けにはAubry集合と呼ばれる集合が重要な役割を果たすが,私の結果はこの集合が空集合になる場合も含んでいるところが新しい点の一つである.この場合,Aubry集合は"無限遠方"に隠れていると思うことで従来と類似の主張が成立する.以上の成果はイタリアおよびドイツにおける国際研究集会,あるいはいくつかの国内研究集会において発表された. また,確率制御理論と関連の深いHamilton-Jacobi-Bellman方程式に対して同様の問題を考えた場合と先の研究との相違点を考察した.Aubry集合という概念は2階の偏微分方程式に対しては定義できないが,力学系的視点から見た場合Aubry集合が空集合であるという上述の主張は,フィードバックを受けた制御過程の非再帰性にほぼ対応する.そこで,この種の問題の専門家であるAcademia SinicaのS.J.Sheu教授と議論し,一定の方向性を得た.特に,方程式の係数が周期構造を持つとき,上述の問題は均質化現象と深く関係する.
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Research Products
(3 results)