2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J09364
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 里実 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 走化性 / 細胞内情報伝達 / 細胞極性 / 脂質 / 1分子イメージング |
Research Abstract |
細胞外の走化性物質cAMPの濃度勾配を受容すると、細胞膜上で起こる一連の情報伝達反応を経て、各種のタンパク質が細胞膜上で前後に局在化する。この反応が、細胞膜リン脂質の脂肪酸組成が異常な細胞では正しく起こらないことを発見した。細胞膜の物性の違いがどのように情報伝達に影響を及ぼすのかを理解するために、この変異体細胞での情報伝達の入出力関係を調べた。反応の出力のマーカーとして細胞外cAMP濃度の高い側で細胞膜に局在するタンパク質CracにGFPを融合したものを用い、これを発現させた細胞の横にcAMPを放出するガラスマイクロピペットを設置することで細胞に濃度勾配刺激(入力情報)を与え、Crac-GFPの局在を観察した。その結果、野生型でCrac-GFPはcAMPピペットのある側のみに局在化するのに対し、脂質組成異常細胞ではその局在部位はcAMPの濃度勾配に全く依存せずランダムになり、局在部位の大きさも一定ではなかった。細胞外に勾配ではなく一様にcAMPを与えた場合、Crac-GFPは一過性の細胞膜移行を示す。この反応の細胞外cAMP濃度依存性を調べると、脂質組成異常細胞では応答率が低下していることを示す結果を得つつある。これらの結果から、脂質組成異常細胞の脂質環境では、情報伝達の効率が低下しており、前後情報を下流のシグナル分子に伝達できないと考えられる。 ここで、この現象がどの情報伝達分子の挙動に由来するのかを知るために、情報伝達分子CracおよびPTENの細胞膜上での挙動について、1分子可視化による解析を行った。その一部は既に発表済みである。残りについて発表するにあたって、解析結果が蛍光プローブYFPのブリンキング現象を由来とするアーティファクトを含んでいないことを示す必要が生じた。プローブをTMRに変えることで、この可能性を充分に排除できる結果を得、現在発表準備中である。
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Research Products
(1 results)