2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J09364
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 里実 Osaka University, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 走化性 / 細胞内情報伝達 / 細胞極性 / 脂質 / 1分子イメージング |
Research Abstract |
細胞は、環境に存在する化学物質の濃度勾配に応じて方向性のある運動をする(走化性)。走化性物質を受容すると細胞膜上で起こる一連の情報伝達反応を経て、細胞に前後極性が生じる。このとき、いくつかの情報伝達分子が細胞膜上で前後に局在化することが知られている。このように、走化性の情報伝達過程には細胞膜が必須の役割を果たしており、細胞膜の物性の違いによってどのような影響を受けるのかを知ることには多大な意義があると考えた。そこで、脂質代謝酵素の欠損によって細胞膜の脂質組成に異常をきたした変異体細胞を用いて、この情報伝達の入出力関係を調べた。その結果、脂質組成異常細胞ではcAMPの濃度勾配の「方向」を正しく伝達できていないことがわかった。また、この細胞ではcAMPに対する応答が低下していた。これらの結果から、脂質組成異常細胞の脂質環境では、情報伝達の効率が低下しており、前後情報を下流のシグナル分子に伝達できないと考えられる。ここで、この現象がどの情報伝達分子の挙動に由来するのかを知るために、情報伝達分子CracおよびPTENの細胞膜上での挙動について、1分子可視化による解析を行った。今年度は、特に、野生型細胞の細胞膜上でのPTENの振る舞いを明らかにし、細胞膜結合に対する制御を解明することを目的として研究を行った。新たに蛍光プローブとしてTMRを用いたことによって、結合時間を正確に計測することが可能になり、その結果、PTENは細胞膜上で2状態をとりうることが明らかになった。現在、PTENが正常な膜環境で行っている情報処理メカニズムについてのモデルを構築しており、今後これと脂質組成異常細胞でのPTENの振る舞いとを照らし合わせることで、濃度勾配の方向という情報を伝達する上で本質的な情報伝達機構について知見を得られるものと考えられる。
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Research Products
(3 results)