2006 Fiscal Year Annual Research Report
科学理論の意味論的概念による科学哲学の諸問題の考察
Project/Area Number |
05J09398
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森田 邦久 大阪大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 科学的説明の分析 / 線引き問題 / 科学的方法論の分析 / 因果性の分析 |
Research Abstract |
科学的説明・因果性の分析,科学的方法論の分析,そして科学と疑似科学の線引き基準について新たな考察を試みた.まず,科学的説明は,従来広く受け容れられてきた説明理論である統合説や因果説の難点を指摘し,それに変わる新しい理論として「本質による説明理論」を提案した.それによると,科学的説明において,確かに統合は重要なのであるが,.その統合により明らかになった現象の本質を指摘することが本質的な点である,さらに,反事実的条件文による因果性の分析において問題とされる「遅いプレエンプション」を科学的説明の分析に用いた語用論的考察によって回避することができることも示した.同時に,これらの分析を通じて,科学的方法論の特徴を明らかにした.それによると,疑似科学的な説明は,形式的には上で示したような特徴を備えているのであるが(それゆえ一面において科学的なのである),説明のために要求される新しい要素を導入する際に問題があることが明らかになった.たとえば,科学では,未知の実体が存在すると仮定するとき,それはそのときの科学者集団内で受け容れられている観察手段によって観察可能であるか,その導入によって独立的な法則が統合できるかでなければならない.ところが,疑似科学的な説明において導入される要素はそういった特徴を備えていないのである.以上の成果は,京都科学哲学コロキウム,および科学基礎論学会において口頭発表され,『待兼山論叢』39号に論文として発表され,さらに『科学基礎論研究』106号に論文が掲載予定である.
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Research Products
(1 results)