2005 Fiscal Year Annual Research Report
構築主義の再検討:ルーマンのシステム理論におけるラディカル構成主義の位置づけから
Project/Area Number |
05J09404
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡會 知子 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会問題 / 構築主義 / 排除 / 差別 / ドイツ / コミュニケーション / ラディカル構成主義 / システム理論 |
Research Abstract |
本年度は、とりわけ1990年代以降、ドイツを中心として学際的な議論を呼んでいるN.ルーマンの「包摂/排除」論を検討することにより、日本における近年の差別(排除)問題研究と関連づけ、理論的な示唆を導き出すことを試みた。 研究活動としては、まず、七月に「差別・排除・カテゴリー:N.ルーマンの『包摂/排除』概念のよる一考察」と題して研究報告を行った(「社会の理論研究会」於:京都大学)。これをもとに十月には、日本社会学会にて、「コミュニケーション過程における『包摂/排除』概念の分析」と題して報告を行った(於:法政大学)。八月は、アメリカ社会学会と社会問題研究学会へ出席するためフィラデルフィアを、また資料収集のためニューヨークを訪れた。両学会への参加は、海外の研究者との交流を図り、新しい研究動向を把握する上で有意義な機会となった。とりわけ、社会問題研究学会の座長の一人であるJoachim J.Savelsberg氏から、本研究にたいする示唆を直接得られたことは貴重であった。また、これらの活動と並行して、現在ドイツで、ルーマンの「包摂/排除」論の経験研究への応用を積極的に試みているArmin Nassehi氏と連絡を取り合い、その結果、来年度の四月から、ミュンヘン大学の氏のもとで研究をさせてもらう機会を得た。以上の活動を通して、これまで社会問題研究(とりわけその中で大きな影響力を持つ構築主義的研究)が人々の相互作用を記述する際に切り捨てているとして批判を受けてきた、対面的なコミュニケーションを支える「意味をめぐる包摂/排除」という位相を主題化するための枠組みを理論化した。二月にこれを、本年度の成果として、論文「相互作用過程における『包摂』と『排除』:N.ルーマンの『パーソン』概念との関係から」にまとめた(現在、査読審査中である)。
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