Research Abstract |
第一の研究では,乳がん患者に対する配偶者の支援的な態度の中で,患者からの評価が分かれるサポート態度とはどのようなものであるか,乳がん患者28名(平均年齢:55.11±7.36歳)を対象に面接調査によって探索した.内容分析を行った結果,患者の認知している配偶者のサポート態度は,8つのカテゴリー(1:「積極的態度」,2:「親和的態度」,3:「察知的態度」,4:「受容的態度」,5:「前進的態度」,6:「補完的態度」,7:「保護的態度」,8:「放任的態度」)に分類された.そのうち,患者の60%以上が肯定的評価のみを下すという基準を満たさなかったのは,「保護的態度」と「前進的態度」という2つのサポート態度であった. 第二の研究では,「保護的態度」と「前進的態度」に分類された具体的な配偶者のサポート態度項目を用いて,109名の乳がん患者(平均年齢:54.64±11.28歳)を対象とした質問紙調査を行った.探索的因子分析と検証的因子分析を行い,配偶者のサポート態度構造を探索した.その結果,患者の評価の分かれる配偶者のサポート態度は,2次因子構造を持つことが明らかとなった.上位因子は,「介入」,「回避」,「楽観」の3因子で,「介入」の下位因子として「過保護」,「激励」,「干渉」の3因子が得られた.「干渉」という下位因子は,「介入」だけでなく「回避」という上位困子にも含まれるという構造がみられた.面接によって得られた,実態に即した「保護的態度」と「前進的態度」という一元的な概念が,統計処理を経て,多元的な概念で説明されたと言える.これらの因子のうち,患者の心理的適応に影響を及ぼしていたのは,「回避」因子のみであった.配偶者からの「回避的サポート態度」は患者にとってサポートと評価されない、また抑うつ・不安に影響を及ぼすサポート態度であることが示された.
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