2005 Fiscal Year Annual Research Report
実験経済学を通した京都議定書及びポスト京都の国内・国際制度設計
Project/Area Number |
05J09441
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 研樹 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 実験経済学 / 環境経済学 / 地球温暖化 / 京都議定書 / 制度設計 / 排出権取引 |
Research Abstract |
本研究は実験経済学を通した京都議定書及びポスト京都の国内・国際制度設計である。初年度である本年は、京都議定書を遵守するために必要な国内制度の設計について理論と実験の両面からの検討を行った。 まず、現在提案されている様々な国内温暖化防止制度を、京都議定書は遵守可能か、経済効率性、環境保全性、費用負担の衡平性はどの程度なのか、という視点から検証した。その上で、京都議定書を遵守し、経済効率性を最大にしながらも、排出権納付者の費用負担を最小限にする制度として上流比例還元排出権取引制度という提案を行った。この提案は、化石燃料の輸入・採掘者に対して、排出権をオークションで配分し、排出者の納付を義務づけるが、排出権の購入量に比例してオークション収入を還元することで排出権納付者の費用負担を減らしながらも、京都議定書を遵守可能とした制度である。この提案は、西條辰義編著(2006)『地球温暖化対策:排出権取引の制度設計』日本経済新聞社に所収されている。 また、これと並行して、上流の化石燃料輸入者と下流の電力生産者のどちらに排出権を納付させるのが望ましいのかを実験室で実際の人間を被験者として実験を行った。実験は3種類からなる。1つ目は化石燃料輸入者に排出権の納付を義務づけ、排出権が納付できない場合のペナルティを高くする実験、2つ目は化石燃料輸入者に排出権の納付を義務づけるが、排出権の納付できない場合のペナルティを低くする実験、3つ目は電力生産者に排出権の納付を義務付け、排出権が納付できない場合のペナルティを高くする実験。 実験から、化石燃料輸入者に排出権を納付させ、ペナルティ額を高くする実験が経済効率性と京都議定書遵守の側面からは最も望ましい制度であることがわかった。この実験内容と結果については鈴村興太郎・長岡貞男・花崎正晴編(2006)『経済制度の生成と設計』東京大学出版会に所収されている。
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Research Products
(2 results)