2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J09446
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長江 亮 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | イベントスタディ / 障害者雇用 / 労働需要 / 政策評価 |
Research Abstract |
本研究では、2003年に開示された個別企業の障害者雇用状況という情報に対して株価がどのように反応するのかを検証して(1)障害者雇用施策、2.企業の社会責任を評価して投資をする「社会的責任投資」の現状、といったトピックスを議論するための事実の提供。(2)株価変動と労働需要、企業業績との関係を分析して、特定グループの雇用保護を狙った法律の機能の考察。以上の二点を目的としている。 昨年度行った研究で、一つ目に法定雇用率達成企業と未達成企業の長期的な株価パフォーマンスに有意な差がないこと、短期的には障害者雇用は資産市場からおおむねマイナスの評価を受けていることが分かった。二っ目に、障害者に対する労働需要に強く影響すると予想されるファミリーフレンドリー・均等化推進企業の表彰制度が、受賞企業の大学生就職人気ランキング、株価に与える影響を分析した。そして、受賞企業の短期的な株価と人気が受賞のニュースで上昇していることがわかった。 本年度の研究成果は以下の二点である。 (1)昨年度得られた成果に加えて、障害者雇用が企業業績に影響を与えることによる内生性の影響とアノマリーの可能性を考慮して、障害者雇用という情報が短期・長期の株価に与える影響を検証した。その結果、長期的な影響はないこと、短期では東京製造業で法定雇用率達成企業の株価は下落、未達成企業は上昇する形で有意な影響があることを明らかにし、製造業では障害者雇用が企業の負担となっている可能性があることを明らかにした。 (2)(1)に加えて、昨年度のファミリーフレンドリー・均等化推進企業表彰施策は企業にプラスの影響を与えることを明らかにした成果を組み合わせて、両施策(すなわち法律)の機能を考察・議論して「特定グループの雇用保護施策に関する経済分析-資産市場からの政策評価」というタイトルの論文として纏め上げた。また、そのうち本年度得られた成果は、査読付雑誌に投稿中である。
|