2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体エネルギー変換システムの入出力のダイナミックな相関の1分子計測とモデル化
Project/Area Number |
05J09577
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷口 雄一 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 1分子生物学 / 生体分子モーター / 生体エネルギー変換 / 熱力学 / エンタルピー:エントロピー / キネシン / 光ピンセット |
Research Abstract |
本研究の目標は、生体ナノモーターであるキネシンが、どのようなキネティクス経路を介して運動を発生するのかを記述し、キネシンによる生体エネルギー変換システムにおけるエネルギー変換の流れをモデル化することにある。生体1分子計測技術の一つである光ピンセット法を用いて、キネシン1分子によるステップ運動発生の時系列データを、様々な負荷・温度・ATP濃度条件下において得ることに成功した。検出されたステップ運動については、ステップの方向性・ステップの待ち時間に注目して、統計的かつ定量的な特徴抽出が行われた。その結果、各物理条件に普遍的な、前後のステップ発生過程における内部化学状態の確率論的遷移過程スキームが得られた。 キネシンの運動発生機構に関するエネルギー論的知見を得るために、代表的な熱化学反応理論である遷移状態理論を応用して、ステップ発生の確率論的プロセスの具象化が行われた。先述の計測法を用いて解析上十分な標本数が得られたキネシンの運動に対して、遷移状態理論から派生した自由エネルギー地形モデルを基とした統計的な解析を行うことで、結果として前後のステップ発生に付随する各種の熱力学的変化量(活性化自由エネルギー量・活性化エンタルピー量・活性化エントロピー量・活性化距離)を得た。得られた結果は、キネシンがエントロピーを駆動力として一方向性の運動を引き起こしているという重大な事実を端的に示すものである。決定された熱力学量は、ステップ反応における系の内部エネルギー変化や分子機序、力学的構造を反映したものであり、生体ナノモーターの動作原理に関する今後の研究に対しても非常に重要な手がかりをあたえるものである。
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Research Products
(2 results)