2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体エネルギー変換システムの入出力のダイナミックな相関の1分子計測とモデル化
Project/Area Number |
05J09577
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷口 雄一 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 1分子生物学 / 生体分子モーター / 生体エネルギー変換 / メカノケミカルカップリング / キネシン / 光ピンセット法 / 1分子熱力学 |
Research Abstract |
本研究の目標は、生体ナノモーターであるキネシンが、どのようなキネティクス経路を介して運動を発生するのかを記述し、キネシンによる生体エネルギー変換システムにおけるエネルギー変換の流れをモデル化することにある。現在キネシンのエネルギー変換のメカニズムに関しては、2つの相反するモデルが提唱されている。一つ目はタイトカップリングモデルであり、キネシンのメカノケミカルカップリングをギアとギアの噛み合わせに見立てたモデルである。キネシンは、ATP加水分解反応を通じて前後に単位ステップ運動を発生しながら運動機能を実現することが知られているが、このモデルの場合、キネシンの前方向へのステッチ(フォワードステップ)はATP加水分解反応とカップルしているのに対し、後ろ方向へのステップ(バックワードステップ)はATP加水分解反応とは関係なく起こる。一方、二つ目のモデルはルースカップリングモデルと呼ばれるモデルであり、キネシンのメカノケミカルカップリングがサーマルラチェットモデルなどの熱揺らぎを利用したメカニズムによって生じることを想定したモデルである。この場合、ATP加水分解反応はフォワードステップだけでなくバックワードステップにもカップルする。現在、両者のモデルのいずれが正しいかは未だ明らかとなっていないが、フォワードステップとバックワードステップのATPのカップリングを個別に調べることにより、これらの検証が可能となると考えられる。そこで我々は、1分子ナノ力学計測の技術を用いて、キネシンの前後のステップを様々なATP濃度で計測することにより、この問いを明らかとすることを試みた。その結果、キネシンの前後へのステップ頻度はATP濃度を上げることによって同様の割合で上昇することがわかった。このことは、前後のステップ運動がATPの結合反応によりトリガーされていることを直接示しており、キネシンのメカノカップリングがタイトではなくルースであることを示唆している。本研究の結果は、今後の生体ナノモーターの動作原理に関する研究に対して非常に大きな示唆を与えることが期待できる。
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Research Products
(2 results)