2006 Fiscal Year Annual Research Report
トンネルスピン注入によるカーボンナノチューブ・スピントロニクスデバイス
Project/Area Number |
05J09583
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上村 崇史 大阪大学, 産業科学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カーボンナノチューブ / スピン輸送 / クーロン振動 / 磁気抵抗比 |
Research Abstract |
バックゲート型半導体単層カーボンナノチューブ(s-SWNT)量子効果素子を作製し、測定した。 s-SWNT量子効果素子は、7.2Kにおいて、ゲート電圧に依存して4つのタイプの特性を示した。ゲート電圧V_G>32Vの領域で、n型伝導クーロン振動特性、-32V>V_G>-12Vの領域で、バンドギャップに対応するドレイン電流の流れない特性、0-V>V_G>-12Vのp型伝導クーロン振動特性、V_G>0Vの領域で、量子干渉特性。この正孔の量子干渉特性はコンダクタンスピークとして観測された。我々は量子干渉の共振器長Lをコンダクタンスピークの間隔から見積もり、L=55nmという値を得た。s-SWNT量子効果素子のチャネル長の設計値は72nmであるので、チャネル全体が共振器として働いていると考えられる。 7.2Kにおいて、量子干渉特性が観察される様なゲート電圧領域で、チャネル抵抗の外部印加磁場B依存性を測定した。外部印加磁場はs-SWNTの軸方向に平行に印加した。外部印加磁場は、1000Gaussから-1000Gaussに走印(往印加)して再び1000Gaussに向けて走印(複印加)した。往印加において200Gauss>B>-400Gaussの領域で約11.6%抵抗の増大が見られた。B<-500Gaussでは、再び抵抗は減少した。これは、200Gauss>B>-400Gaussの領域で、片方のコバルト電極の磁化が反転したためにs-SWNT量子効果素子がスピンバルブとして働き磁気抵抗変化が現れたのだと考えられる。複印加では、磁気抵抗変化が得られなかった。この理由は、複印加での抵抗が往印加の抵抗より高い値であったことから、s-SWNTの周囲の酸化シリコン膜中にチャージがトラップされて抵抗の値が変わり、このチャージのスピンによって伝導スピンの反転が起こったことであると考えられる。 このように、s-SWNTのチャネル全体に正孔が量子干渉する量子効果素子において、磁気抵抗比を測定することに成功した。
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