2005 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック生体系レーザー光誘起電子移動過程の解析と応用
Project/Area Number |
05J09636
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田仲 真紀子 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 電子移動 / DNA / ポルフィリンダイマー / 電荷分離状態 / NAD^+類縁体 / NADH / 活性酸素種 / DNA切断 |
Research Abstract |
生体内の最重要分子であるDNA内の電子移動反応についてはBartonらによって長距離電子移動の観測が報告されたことにより、その可能性について数多くの研究がなされているが、未だに分かっていない基本的な電子移動特性も多い。また一方でDNAはフリーラジカルや光照射により酸化され、この酸化が癌や老化の原因となっていると考えられている。そのためこのDNA損傷に至るDNA酸化メカニズムへの関心が非常に高まっている。 本研究ではこれまでの予備実験により、DNA中に生体内酸化剤NAD^+の類縁体が挿入されることが明らかになっているため、このニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD^+)類縁体を電子アクセプター、DNAの主溝に結合することが知られているルテニウム錯体を電子ドナーとして用いて、DNA反応場中での光誘起電子移動特性について検討を行った。またその結果をふまえてDNAと同様にπスタックしたポルフィリンダイマー中にNAD^+類縁体を挿入することによってπスタックした分子中での光誘起電子移動特性について、その特徴的な長寿命電荷分離状態を検出した。 また本研究では生体内での電子源として重要な働きをする補酵素NADHによるDNAの活性酸素種および電子移動還元反応による切断についても着目し、DNA損傷メカニズムの解明を試みた。その結果酸素存在下ではラジカル連鎖反応によってNADHによりDNAが切断されていることが明らかになった。また一方窒素下では空気中よりもさらに効率のよいNADHによるDNA切断が起こることが観測され、NADHによるDNAの電子移動還元による損傷が起こることを明らかにした。 これらの研究は最終的にDNA損傷から遺伝子改変への過程の直接のレーザー光を用いた観測を目指す上で、ミクロスコピックな過程での成果をメゾスコピック領域へ展開する重要な基礎研究になりうると考えられる。
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