2006 Fiscal Year Annual Research Report
1-ナフチルメチルアミン塩の形成する有機層構造を用いた分子計算機
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05J09642
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 勝成 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 結晶工学 / 超分子化学 / 有機固溶体 / 自己組織化 / 有機塩 / 単結晶X線構造解析 / 層間化合物 / 分子演算 |
Research Abstract |
我々は、1-ナフチルメチルアミン(NaMe)が固い構造モチーフに基づく層構造を形成することや、この構造モチーフを鋳型として用いることにより多成分からなる有機固溶体の形成について報告した。また、類似の構造モチーフを形成する4-ベンジルアミン塩の結晶において、分子構造から階層的に結晶構造を理解することにより、超分子キラリティーに対する新たな概念を示した。 本年度は、硬い構造モチーフによって得られた有機固溶体を用いて、その構造的特徴から分子構造をインプットとし、得られるXRDの層間距離(d値)をアウトプットとして得る平均化演算について研究を行った。 ・等モル固溶体による平均化演算 昨年度の研究から、NaMe・脂肪酸塩が形成する固溶体の形成範囲が明らかになっているため、固溶体を形成する鎖長差が6以下の物について、得られた固溶体のd値をCNへ変換し、脂肪酸の炭素数から予想される平均値と比較した。その結果、CNの値は平均値とほぼ一致していた。例えばC4s(ブタン酸塩)とC8s(オクタン酸塩)の固溶体ではCN=6.0±0.2となり、C10s(デカン酸塩)とC14s(ミリスチン酸塩)の固溶体ではCN=12.0±0.5となる。また、多成分からなる固溶体からも同様の結果を得ることができた。つまりNaMe塩の形成する固溶体は、複数の自然数を平均化する演算子となることが示された。 ・混合比率の変化による加重平均化演算 NaMe塩の固溶体は、無機の合金と同様にベガード則に従う。これはモル分率に関する関数として、加重平均のための演算子となる可能性を示している。C6s(ヘキサン酸)とC8s(オクタン酸)との固溶体について、脂肪酸の混合比率を連続的に変化させた固溶体のd値をCNに変換し、モル分率に対してプロットしたところ良い直線関係を示した(r^2=0.985)。混合した脂肪酸の炭素数とモル分率から計算される加重平均値と良い一致を示した。これらの結果から、NaMe塩の固溶体は、混合するモル分率に関する関数として、加重平均の演算子となることも示された。
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Research Products
(1 results)