2006 Fiscal Year Annual Research Report
STAT3の標的遺伝子LIV1を介した癌移浸潤の分子機構解明
Project/Area Number |
05J09732
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加々良 尚文 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 亜鉛 / 亜鉛シグナリング / 亜鉛トランスポーター / 癌転移 / 細胞運動 / 乳癌 |
Research Abstract |
我々は上皮-間葉転換を制御する因子としてZincトランスポーターZIP6/LIV1を同定し、ZIP6がゼブラフイシュの原腸陥入時の細胞運動に関わっていることを報告した(Nature,2004)。ZIP6は以前より乳癌のリンパ節転移との関連が指摘されていたものの、近年ではこれを否定する報告も現れ、その詳細な生物学的機能は明らかでない。我々は、ZIP6をはじめとする亜鉛トランスポーターがヒト癌細胞に及ぼす影響について検討を重ねたところ、今回新たに、ZIP6と最も近縁のファミリーメンバーであるZIP10トランスポーターがヒト乳癌細胞の転移浸潤能に関わっていることを明らかにし、論文として報告した(Cancer Science, in press)。乳癌手術標本の発現解析では、ZIP10-mRNAはリンパ節転移陽性例において陰性例より有意に高い発現を認めた(p=0.00080)。さらに乳癌細胞株においても、転移性株(MDA-MB-231,MDA-MB-435S)は非転移性株より高いZIP10-mRNA発現を示した。これらの転移性乳癌細胞株のZIP10発現をsiRNAでノックダウンすると、細胞内への亜鉛の取り込みが減少し、細胞運動能が著明に低下した。亜鉛のキレート剤処理でもZIP10ノックダウン同様の細胞運動抑制が確認された。以上より、乳癌細胞の運動能獲得には亜鉛が必要であり、その供給に亜鉛トランスポーターZIP10が関与していることが明らかになった。必須微量元素の一つである亜鉛の生体内での役割と。して、トランスポーターを介した亜鉛による細胞機能制御の一機構を提唱するものと考えられる。
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Research Products
(2 results)