2005 Fiscal Year Annual Research Report
ウシβラクトグロブリン変異体を用いたフォールディングにおけるα→β転移機構の解明
Project/Area Number |
05J09819
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八木 正典 大阪大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | タンパク質のフォールディング / α→β転移 / βラクトグロブリン / 部位特異的変異導入 / pHパルスラベル重水素交換法 / 核磁気共鳴法 / ストップトフロー / 生物物理学 |
Research Abstract |
本研究で使用しているウシβラクトグロブリン(BLG)は、フォールディング過程において、一度、天然構造には存在しないαヘリックスを形成した後、天然構造のβシートへと変化するα→β転移をすることが知られているが、その詳細は明らかにされていない。本研究ではBLGのフォールディング機構、特にα→β機構について明らかにすることを目的としている。 野生型BLGは変性状態からのフォールディング効率が悪く、ここでは研究代表者がこれまでに作製したフォールディング効率の良い変異体(C121A)を野生型の代わりに用いている。主に用いる手法はpHパルスラベル重水素交換で、この手法でラベルしたサンプルを核磁気共鳴法(NMR)で測定することで中間体の二次構造情報をアミノ酸残基レベルで得ることができる。 本年度は、NMRで測定するために必要なシグナルの帰属を行い、pHパルスラベル重水素交換実験を酸性および野生型では困難であった中性条件で行った。その結果、数ミリ秒までに形成されている領域はどちらの条件でも同じG、Hストランドであり、その領域の形成がBLGのフォールディングに重要であることが示唆された。 また最近、BLGのABループ領域に変異を入れたA34Cが、天然構造を崩さずに分子間でS-S結合を形成し安定な二量体として存在することが報告された(Sakurai et al.J.Mol.Biol.(2006))。この変異をC121Aに導入し、二量体としたところ、単量体では数分でフォールディングを完了するのに対し、数時間かけてゆっくりとフォールディングさせることに成功した。この遅くフォールディングする性質を用いれば、より初期のフォールディング中間体の情報を得ることができると考えられ、今後、α→β転移反応が起きている領域など、詳細なフォールディング機構を明らかにできると期待できる。
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