2006 Fiscal Year Annual Research Report
ウシβラクトグロブリン変異体を用いたフォールディングにおけるα→β転移機構の解明
Project/Area Number |
05J09819
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八木 正典 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | タンパグ質のフォールディング / βラクドロブリン / α→β転移 / 二量体 / 部位特異的変異 / 核磁気共鳴法 / 重水素交換パルスラベル法 / ストッブトフロー |
Research Abstract |
本研究課題で用いたウシβラクトグロブリン(BLG)は、フォールディング研究におけるモデルタンパク質として用いられてきたタンパク質である。研究代表者は、昨年度までに、BLG二分子がジスルフィド結合により二量体化することが報告されているA34C変異を、研究代表者が作製した、変性の可逆性が高く、フォールディング研究に適したC121A変異体に導人したA34C/C121A変異体が、非常に遅くフォールディングすることを見いだした。今年度は、二量体化の影響をうけたA34C/C121A変異体の非常に遅いフォールディング反応を、ストッブトフローや重水素交換バルスラベル法を含むさまざまな手法を用いて測定、解析し、α→β転移反応を含むBLGのフォールディング機構のより詳細な研究を行った。 その結果、A34C/C121A変異体では、変性状態からの再生効率がフォールディング反応を行う尿素濃度に依存し、低い尿素濃度よりも中程度の尿素濃度において高くなることが明らかになった。さらに、フォールディング反応初期に形成されている中間体において、A34C/C121A変異体とC121A変異体では、同程度の疎水性コアおよび非天然のαヘリックスを含む構造が形成されていることが示された。これらの結果から、フォールディング反応初期には、主に二量体化に影響されない近距離の疎水相互作用により非天然のαヘリックスを含む大まかな構造が形成され、その後、非天然のαヘリックスがβシートへと変化し、より詳細なコンフォメーションが形成される際に、二量体化により新たに生じた非天然の相互作用の影響によって、フォールディング速度や再生効率の低下が起きているという、A34C/C121A変異体のフォールディング機構が明らかになった。このことは、BLGのα→β転移反応には、広範囲の残基との適切な相互作用による構造変化が必要であることを示唆している。
|