2005 Fiscal Year Annual Research Report
走電性を利用したゆらぎ入力に対する細胞応答の測定と解析
Project/Area Number |
05J09970
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 雅之 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 走電性 / 細胞性粘菌 / 走化性 / 細胞運動 / PI3キナーゼ / cGMP |
Research Abstract |
本研究は細胞が電場印加に応答して方向性のある移動運動を行う走電性という性質を利用して、外部から細胞に積極的に電位ゆらぎを印加し、それに対する応答を調べることで細胞機能におけるゆらぎの役割を検証することを目的としている。これまでに様々な細胞種が走電性応答を示すことが報告されている。本研究で使用している走化性研究のモデル生物である細胞性粘菌は、電場存在下において陰極側への移動運動を示す。しかしながら、いずれの細胞種においても走電性応答の分子的基盤に関してはよくわかっていない。そこで、まず走電性に関与する分子コンポーネントを特定するために、阻害剤や走化性経路に異常がある変異体株を用いた走電性実験を行った。その結果、走化性応答を示さず細胞内のcGMP量に異常があるKI変異体株(KI-5,8,10)が、走電性を示さないだけでなく(KI-5,10)、野性株とは反対の陽極側への移動運動を示す(KI-8)ことがわかった。今後、KI変異体株の詳細な解析を進めることで細胞性粘菌の走電性に関与する分子コンポーネントを特定できる可能性がある。また、効率的な走化性応答に重要な分子であるPI3キナーゼの阻害剤が細胞外液に存在すると、走電性効率が著しく低下することもわかった。これらの結果は、走電性経路と走化性経路にはある程度の共通性があり、電場印加により走化性経路にモジュレーションをかけることができる可能性を示唆している。また、本研究では様々な条件下における細胞運動が重要な解析対象となるため、細胞運動を速度ゆらぎ、方向転換頻度、運動効率などのパラメータで解析する手法も併せて開発した。
|