2006 Fiscal Year Annual Research Report
走電性を利用したゆらぎ入力に対する細胞応答の測定と解析
Project/Area Number |
05J09970
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 雅之 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 走電性 / 細胞運動 / グアニル酸シクラーゼ / PI3K / 細胞性粘菌 / 走化性 |
Research Abstract |
本研究は走電性を利用して外部から積極的にゆらぎを印加することで、統合された機能である細胞運動にどのような影響があるかを検討し、ゆらぎが有効に利用されている可能性を検証することを目的としている。そのため、細胞が電場という入力刺激をどのように処理し、方向性のある細胞運動を実現しているかを解明することは重要である。これまでにグアニル酸シクラーゼ依存性経路に異常があるKI変異体株の細胞が電場存在下において、ランダムな方向へ運動したり(KI10)、野生株とは逆の陽極側への移動運動を示す(KI8)ことを発見した。、これ5の結果はグアニル酸シクラーゼ依存性経路が走電性応答における運動方向を決定している可能性を示唆している。しかしながらKI変異体株は薬剤処理による突然変異体株として単離されたため、変異点の特定が困難であった。そこで、グアニル酸シクラーゼ欠損株を用いて実験を行った結果、特定の条件下で陽極側への移動運動を再現できた。この結果により、グアニル酸シクラーゼ依存性経路が走電性応答における運動方向決定に重要な役割を担っていることが示された。また、他の細胞種と同様に細胞性粘菌の走電性応答においてもPI3キナーゼの活性化は重要である6そこで、このPI3キナーゼとGFPの融合タンパク質を作製し、走電性応答中の細胞内における挙動を観察した。その結果、陰極側への移動運動中、PI3キナーゼは細胞前端(陰極側)に局在することがわかった。細胞をアクチン重合阻害剤で処理し、運動機能を抑制して電場を印加したとき、PI3キナーゼの陰極方向への局在は観察されなかった。PI3キナーゼ阻害剤や欠損株では明らかに走電性効率が低下することから、PI3キナーゼは電場方向のセンシングに関与しているのではなく、細胞極性の安定化などを通して走電性効率の上昇に寄与していることがわかった。
|