2005 Fiscal Year Annual Research Report
上皮系組織におけるがん原遺伝子Srcとその制御因子CSKの機能解析
Project/Area Number |
05J09996
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八木 玲子 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Csk / SFK / 上皮細胞 / コンディショナルノックアウト / 細胞骨格 / 細胞間接着 |
Research Abstract |
本研究は上皮系組織におけるSrc family tyrosine kinases (SFK)の生理的役割と、SFKの活性制御機構破綻によるがんの発生や悪性化の分子機序解明を目的としている。昨年度までの研究により、SFKの活性制御因子Cskを上皮組織特異的にノックアウトしたマウス(K5 Csk-KOマウス)の上皮組織では細胞の過剰増殖、分化の遅延、細胞間接着や細胞骨格の形成に異常が生じること、表皮角化細胞(ケラチノサイト)初代培養系においてもほぼ同様の現象が再現されることが明らかになっていた。 そこで、K5 Csk-KOマウスで観察された異常の発現機構を明らかにするために、ケラチノサイト初代培養系を用いて解析を行なった。まず、細胞間接着に関与するタンパク質のチロシンリン酸化や発現量の変化について検討したが、顕著に変化する分子は同定されなかった。また、細胞骨格の顕著な再編成が観察されることから細胞骨格を制御する分子についても検討を行なった。Srcのリン酸化ターゲット分子であるCortactinのミュータントタンパク質をインジェクションしたところ、Csk-KO細胞で顕著な変化は認められなかったことから、細胞骨格の再編成にはCortactin以外の分子のリン酸化が重要であることがわかった。 一方、Cskノックアウトケラチノサイトにおいて遺伝子発現レベルで変化する分子の同定を試みたところ、上皮間葉変換に関与するTwistやSnail、癌の悪性化に関与するMatrix Metalloproteinase (MMP)などの発現上昇が認められた。さらに、物理的接触の多い食道上皮において間葉マーカーの発現や前癌症状である核異形が認められたことから、癌化機構へのCsk/SFKの関与が示された。また、K5 Csk-KOマウスでは表皮下に炎症やファイブロブラストの遊走が観察され、この過程にCsk/SFKが関与することが示唆された。
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