2005 Fiscal Year Annual Research Report
膜結合型プロスタグランジンE合成酵素の解析-癌の発生、進展、浸潤・転移への関与-
Project/Area Number |
05J10010
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
亀井 大輔 昭和大学, 薬学部, PD
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Keywords | 膜結合型プロスタグランジンE合成酵素 / プロスタグランジンE / がん |
Research Abstract |
(1)宿主側mPGES-1の癌の進展への関与に着目した研究実績 mPGES-1遺伝子欠損(KO)マウスまたは野生型(WT)マウスの背部皮下にLewis Lung carcinoma(LLC)細胞を移植し、日数経過に伴う腫瘍増殖を比較検討したところ、mPGES-1 KOマウスでは、WTマウスと比較して、移植後の腫瘍増殖速度の有意な低下が観察された。また腫瘍組織内のPGE_2含有量の顕著な低下とVEGF発現量及びヘモグロビン含有量の減少が認められた。以上の結果、宿主側のmPGES-1が、癌の増殖亢進に寄与していることが明らかとなった。いまのところmPGES-1により合成されたPGE_2が、VEGFの発現調節を介し腫瘍組織内での血管新生を増加させることで、腫瘍増殖が亢進される可能性を想定している。 (2)宿主側mPGES-1の血行性転移への関与に着目した研究実績 mPGES-1 KOまたはWTマウスにLLC細胞を尾静注し、血行性転移能を比較検討したところ、mPGES-1 KOマウスでは、WTマウスと比較して、肺組織表面の癌性結節数と転移肺重量の低下、さらに肺組織内のPGE_2含有の低下が認められた。これらの結果は、宿主側のmPGES-1が、血行性転移能の亢進に寄与している可能性を示唆している。 (3)mPGES-1の炎症性腸疾患への関与に着目した研究実績 組織保護に関わるPGE_2の合成に携わるPGE合成酵素(PGES)に着目し解析を行った。mPGES-1 KOまたはWTマウスにデキストラン硫酸(DSS)含有飲料水を自由飲水させることで、炎症性大腸炎を惹起させ、各種解析をおこなったところ、KOマウスではWTマウスと比較して、血便症状と貧血の増悪傾向が観察され、結腸下部においてPGE_2含有量の有意な低値が認められた。これらの結果は、mPGES-1が大腸粘膜保護に寄与している可能性を示唆している。
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