2006 Fiscal Year Annual Research Report
膜結合型プロスタグランジンE合成酵素の解析-癌の発生、進展、浸潤・転移への関与-
Project/Area Number |
05J10010
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
亀井 大輔 昭和大学, 薬学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | プロスタグランジンE_2 / プロスタグランジンE合成酵素 / がん / 浸潤・転移 |
Research Abstract |
申請者はPGE_2合成系において、COX-2の下流で選択的に機能連関している膜結合型PGE合成酵素-1(mPGES-1)に着目し、本酵素の遺伝子欠損マウスを用いた解析を中心に、癌疾患における発生、進展、浸潤・転移の各々のフェーズに対するmPGES-1の関与を総括的に解明することを目的としている。 1.宿主側mPGES-1の癌の浸潤・転移への関与に着目した研究実績 昨年度、Lewis lung carcinoma (LLC)細胞をマウスに尾静注する血行性転移モデルにおいて、mPGES-1遺伝子欠損(KO)マウスでは、野生型(WT)マウスと比較して、肺への血行性転移能が抑制されることを見いだした。そこで本現象の分子機構を明らかにするため、転移・浸潤に関わる因子について、より詳細な解析を行ったところ、mPGES-1 KOマウスの転移肺では、WTマウスの転移肺と比較して、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9活性、及びVEGF発現の顕著な抑制が認められた。これらの結果は、宿主側のmPGES-1を介して合成されたPGE_2が、MMP-9活性及びVEGF発現調節を介して肺への血行性転移の亢進に寄与している可能性を示唆している。 2.細胞側mPGES-1の癌の進展、浸潤・転移への関与に着目した研究実績 siRNA発現ベクターを用いて、mPGES-1発現抑制(KD)LLC細胞株を作製し、細胞増殖能及び浸潤能をMTTアッセイ法と再構成基底膜をコートしたインベージョンチャンバーアッセイ法により解析を行った。その結果、mPGES-1 KD細胞株では、対照細胞株と比較して、細胞増殖速度及び浸潤能の有意な抑制が認められた。これらの結果は、癌細胞内のmPGES-1を介して合成されたPGE_2が、オートクリンまたはパラクリン的に機能し、癌細胞の増殖や浸潤能の亢進に寄与している可能性を示唆している。
|