2006 Fiscal Year Annual Research Report
宮内庁書陵部蔵御所本を主対象とした近世禁裏仙洞における歌書の書写史・蔵書史の研究
Project/Area Number |
05J10046
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
酒井 茂幸 国立歴史民俗博物館, 研究部, 特別研究員PD
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Keywords | 御所本 / 禁裏本 / 高松宮本 / 霊元天皇 / 後西天皇 / 近衛基煕 / 長秋詠藻 / 六百番歌合 |
Research Abstract |
まず、今年度は、前年度に引き続き『(近衛)基煕公記』の書写事蹟を中心とした解読調査を行った。昨年度から禁裏・仙洞と近衛家との間の歌書の書写校合に問題意識を抱いてきたが、今年度は、『基煕公記』の記載から、藤原俊成の家集である、宮内庁書陵部蔵御所本(以下「御所本」と略称)『長秋詠藻』の書写を、貞享2年(1685)5月7日と確定し得た。基煕室、後西天皇妹である常子内親王の日記『元上法院殿御日記』にも『六百番歌合』(現存の御所本は転写本)を初めとする書写事蹟が見出され、『基煕公記』同様に精読を要する記録である。なお、宮内庁書陵部に天和3年(1683)付の後西院宸翰の[後西院六百番歌合預御証](桂宮本、特-19)が蔵されるが、『元上法院殿御日記』記載の『六百番歌合』書写の記事と符合し、この折の親本は禁裏御本であったことが知られる。 次に、冷泉家時雨亭文庫本の影印公刊により、再び専門学会で注視されている、冷泉家本の霊元天皇の禁裏における書写事蹟を重点的に調査研究した。まず、国立歴史民俗博物館蔵高松宮家伝来禁裏本『定家本三代集』の書写年次を、『(東園)基量卿記』から天和2年10月11日から21日と割り出すことができた。そして、『中院通茂卿記』貞享2年4月16日から5月30日条に詳細に記される、冷泉家本「三百二十余」の書写活動について、現存の禁裏本との同定と書誌的事項の類型化を行った。これにより、個別の歌書の書写年代を確定するに留まらず、同じ冷泉家本の書写でも、禁裏においては、転写本の作製方法が、時期が下るにつれ、前掲の『定家本三代集』のような精巧な透写本から臨模による綴葉装、そして、四つ目袋綴装へと変容していく様相を叙述できた。
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Research Products
(6 results)