2007 Fiscal Year Annual Research Report
分解過程を制御する落葉の質の多様性が森林生態系栄養塩循環に影響を与える機構の解明
Project/Area Number |
05J10093
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒川 紘子 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 多様性 / 土壌分解者群集 / 植食者 / 窒素固定植物 / 栄養塩循環 / 外来種 / 葉の性質 / 生態系機能 |
Research Abstract |
植物は植物間同士の資源獲得競争や植食者への被食防衛機構により、葉の性質を様々に進化させている。生葉の被食防衛と落葉の分解過程を制御する葉の性質は似ていると考えられており、地上部の植食者が植物の質を介して生態系の栄養塩循環に影響を与える可能性がある。今回はそのメカニズムを解明するために、1.異なるタイプの植物の食われにくさと分解されにくさに関わる葉の性質 2.異なるタイプの植物の被食に対する反応と土壌微生物群集活性に与える影響の2点を、ニュージーランドの河畔林に同所的に存在し様々な植物機能グループ(在来植物、外来植物、窒素固定植物)に属する低木40種を用い明らかにした。その結果、1.に関しては、非窒素固定植物のほうが窒素固定植物より食われにくく分解されにくいが、在来植物と外来植物の間には、食われにくさと分解されにくさにおける違いがないということが明らかとなった。また全部の種をプールして解析した場合、食われにくさには葉の総フェノールや繊維含有量が高いことと窒素濃度が低いこと、分解されにくさには葉のリグニン濃度が高いことと面積あたりの重量が重いこと、というようにそれぞれに関わる葉の性質は少しずつ異なっていたが、食われにくさと分解されにくさの間には有意な正の相関関係があることが明らかとなった。このことから被食圧によって生み出された葉の質の多様性が、対象とした生態系の栄養塩循環に影響すると考えられた。2.に関しては、ポットに植えた各植物を定期的に一定量切り取り、植物の成長と性質の変化およびその変化が土壌微生物群集活性に与える影響を明らかにするための実験が終了したところで、植物の種によって被食に対する反応や土壌微生物群集活性に与える影響が顕著に異なることがわかりつつある。今後は結果をさらに詳細に解析し、植物の質の違いがどのように栄養塩循環に影響するかを明らかにする予定である。
|
Research Products
(3 results)