2005 Fiscal Year Annual Research Report
研究開発における企業の境界-知的財産権と契約形態の実証分析
Project/Area Number |
05J10099
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中村 健太 一橋大学, 大学院・商学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 企業の境界 / バイオ・テクノロジー / リサーチツール |
Research Abstract |
本研究では、主として米国のバイオ・テクノロジー企業がSECに重要事項として開示しているライセンス契約のデータを利用して、医薬品開発のステージ別(探索、リード化合物、前臨床、臨床、承認)、契約のタイプ別(事前、事後)、契約主体別に、排他性、ロイヤルティーなどのライセンス条件などの特徴を統計的に分析している。 上流段階(探索段階)のライセンスにおいて、またリサーチツールのライセンスにおいて、排他性が低く、かつ安価なロイヤルティーでライセンスされる傾向があり、また事前ライセンスと比べて事後ライセンスにおいて排他的なライセンス比率は低いことも見出された。すなわち本章から得られる含意としては、上流特許が製品市場及び下流の研究開発に及ぼす弊害が懸念されるものの、実証結果はそうした懸念を必ずしも支持しないということになる。 上流ライセンスの排他比率が低いのは、その用途が多様であるために、当該発明を用いることが下流研究の競合性を直接的に高める可能性は低いことによると考えられる。また上流発明、或いはリサーチツール・ライセンスのロイヤルティーが低いことは、以下の理論モデルと整合的である。 すなわち、上流発明が収益を得られるかどうかは、それを利用して下流の研究を行う企業が研究開発投資とリスクに見合う収入を確保できるかどうかに依存しており、上流段階の発明ほど、商業化のために今後投下すべき研究開発費は大きく、またそのリスクは高いので、下流の研究開発に賦課することが出来るロイヤルティーは限定される。
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