2007 Fiscal Year Annual Research Report
研究開発における企業の境界-知的財産権と契約形態の実証分析
Project/Area Number |
05J10099
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中村 健太 Hitotsubashi University, 大学院・商学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 企業の境界 / 産学連携 / ライセンシング / 意匠権 |
Research Abstract |
本年度前半は、企業、特許、技術契約のデータを用いて、特許ライセンス、研究提携(アライアンス)や産学連携など、研究開発における企業の境界と呼ばれる諸問題について継続的に研究を行ってきた成果を博士論文としてまとめた(タイトル:"Empirical Studies on the R&D Boundaries of the Firm:Licensing,Alliances,and University-Industry Collaborations")。 また、後半では、新たに意匠権に関する研究に取り組んだ。具体的には、『知的財産活動調査』(特許庁)を用いて、国内意匠出願の決定要因を計量的に明らかにすることを目指した。主な結果は以下の通りである。 (1)研究開発集約的な企業ほど、デザインの生産性が高く、また、高品質な製品を有するため意匠模倣の対象になりやすい。したがって、そうした企業では活発に意匠権の出願を行っている。(2)また、特許による専有可能性が弱い状況下では、研究開発集約的な企業ほど意匠権の補完的機能への期待が大きいため、意匠の出願件数が大きい。(3)デザインの新規性によって他社との差別化を指向する企業にとって、当該デザインが法的に保護されることは競争優位を保つ上で重要である。よって、そうした企業では意匠権の出願件数が多い。(4)多様な製品ポートフォリオを展開する多角化企業ほど、模倣品による評判の低下が多方面に及ぶ危険性があるため、意匠権の出願に積極的である。(5)市場における製品寿命が長いほど、長期間にわたって模倣のリスクに晒される。ゆえに、意匠を登録することによる権利保護の効果を長期にわたって享受出来る。また、出願に係る固定費用も分散させやすい。これらの理由から、ライフサイクルが長いほど、意匠出願のインセンティブが高いと示唆される。
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