2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10116
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
笹倉 香奈 一橋大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 刑事訴訟法 / 憲法 / 公開原則 / 裁判の公開 / プライバシー権 / 表現の自由 / イギリス:アメリカ:ドイツ |
Research Abstract |
本研究は、日本の民事訴訟法学・憲法学及び独・米・英における近年の議論に注目しつつ、被告人の人格権の観点から刑事裁判の公開原則を再検討し、プライバシー権を考慮した公開のあり方を主張する筆者独自の理論に立脚し、同理論を実現する環境整備を行うために、実務により接近して、裁判公開のあり方を総合的に検討することを目的とする。17年度は、交付申請書記載の「研究実施計画」に沿い、主として理論面から研究を行った。 17年度の成果は、以下の三点である。 1.本研究開始前の成果に加え、独・米・英における最新の判例を検討するとともに、日本に未紹介の各種報告書等を検討し、より各国の実務・判例の現状に即した研究を行った。特に、2004年末に開始されたイギリスの控訴裁判所での法廷テレビ取材の実験への取組み過程とその結果報告書や、ドイツで2004年に公表された対案『刑事司法とメディア』を入手の上検討したことは大きな成果である。 2.ドイツに渡航し、日本では入手不可能な各種資料を多数入手・検討し、今まで日本において得られていない研究成果を得た。具体的には、未公表の博士論文等を入手したことで、裁判の公開を巡ってドイツで行われた社会的調査や実務上の問題、最新の議論等について知ることができた。さらに、17年度の研究計画で掲げた「犯罪被害者と公開原則」、「営業秘密と公開原則」の問題についてもドイツの最新の議論状況に関する文献を入手できた。 3.現在の日本の刑事法の分野においては検討が不十分な「裁判員制度と公開原則」の問題に関して、特にアメリカ及びドイツの陪審員・参審人制度と報道に関する議論について、研究を進めた。この点に関する検討を18年度も継続することで、数年後に開始される裁判員制度の構築に関し、貴重な提言を行うことができると考える。 以上述べた17年度の研究成果は、引き続き発展・展開させ、18年度中に『一橋法学』等に論文としてまとめた上で掲載する。
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