2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10144
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
森谷 文利 一橋大学, 大学院・商学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 契約理論 / 組織内政治 / パワー / 権限 |
Research Abstract |
平成17年度の課題は、1.パワーが組織に影響を与える経路を明らかにし、2.パワーを考慮した場合の最適な公式的権限配分を導出することであった。そこで,第1に,権限をトップが持つのではなく,ミドルに委譲されなければならない理由について考察し,第2に,パワーの発生原因を「マネージャーが保持する私的情報」と特定し、パワーのメリットを考察した. 第1の点については,これまでの権限委譲の文献よって,契約(賃金制度と行動ルール)を自由に設計できる場合に,常に集権的組織が最適であることが知られている.そこで,どのような契約に対する制約が存在すれば,権限委譲が効率的になるかを考察した.その結果,賃金制度を自由に設計できたとしても,意思決定が事前にルール化出来ない(マニュアル化できない)ものであるならば,権限委譲が最適になる場合があることを明らかにした. 次に,第2の点についてである.情報を根拠とするパワーとは,情報を操作することで相手の意思決定をコントロールしようとするものである.例えば,通常,研究開発部門よりも営業部門が顧客の選好をより知っていると考えられるが,しばしば営業部門は顧客の情報を偽ることで,研究開発部門の意思決定に干渉していることはよくある.その上で,このような情報を根拠とするパワーには,営業部門と研究開発部門の両者の利害を意思決定に反映することが出来る点にメリットがあることを示した.このようなメリットを実現させるためには,営業部門が情報を保持し,研究開発部門が意思決定権限をもつという権限と情報の分離が条件となっている点に注意が必要である. 18年度の計画としては,これらの結果を研究論文として執筆するとともに,このようなパワーの重要性が増大するのは,具体的にどのような組織構造のもとであるかを検討する.
|