2005 Fiscal Year Annual Research Report
中近世移行期日本における貨幣経済史からみた社会構造変容過程の研究
Project/Area Number |
05J10147
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
川戸 貴史 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本史 / 中世 / 撰銭現象 / 悪銭 / 撰銭令 / 貨幣 / 16世紀 / 荘園 |
Research Abstract |
日本における中世から近世への貨幣経済の変容課程を具体的に明らかにすべく、当該期における特異的な現象である悪銭流通およびそれに伴って発生した撰銭現象の実証を行った。そこで、まずは撰銭現象への対応策として当該期権力のなかで最も早く法令(「撰銭令」)を発布した大内氏の銭貨流通政策について検討し、その法令が貨幣流通秩序を公権力として整備しようとするものではなく、あくまで自らの収取体制を維持する目的を持つものであったことを指摘した。また16世紀後半の西日本において米が貨幣として使用されたとされる事実について、あらゆる日常取引を同一視するのではなく、取引対象によって使用貨幣には温度差があった可能性を指摘した。具体的には、当該期における貨幣としての米取引は、高額取引である土地売買等が中心的であり、ごく日常的な取引現場においては、依然として銭貨が使用され続けた可能性を重視した。 このほか悪銭と称された銭貨が登場し、流通の阻害要因たる撰銭現象として問題化した点について、さらなる具体的事情を把握するために新たなる事例発掘に努め、賀茂別雷神社領荘園における年貢銭納入事例における悪銭問題を発見した。この事例に関する一定度の概要は既に公表したが、綿密な検証を今後進める予定である。また、当該課題の先行研究を再検討するなかから、個々の論者により貨幣観を巡る混乱が見られる問題を明らかにした。その上で、当該期における貨幣の定義を再構築することや、その理論を共有する必要性を指摘する成果を公表した。
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Research Products
(2 results)